口腔がんの診断・治療についてです。データを更新しました。
がんの診断に必須であるPET検査は毎日おこなっています。保険適応であるFDG-PETに加え、施設にサイクロトロンを有することから、診断能の新展開が検討されているメチオニンPETも常時使用可能です。
64列マルチスライスCTや3テスラMRIによる腫瘍進展範囲の術前診断は、切除範囲の決定に新しい可能性を含んでいます。
これまでは「優れた生存率」、「少ない機能障害」、「輸血をしない手術」をモットーにがん治療をおこなってきましたが、2005年のアジア・オセアニアで1号機となった放射線治療装置・TomoTherapy(トモセラピー)の導入により、手術主体の治療から手術・放射線治療・化学療法を駆使した集学的治療に移行しています。生存率の改善はもとより、動注化学療法により手術が回避可能な症例も増えてきました。
下記に示すグラフは当科で根治的に顎口腔がん治療をおこなった症例の5年生存率です。対象は、1995年から2009年(口腔外科専門医は2002年から常勤)の間に当科を受診した根治不能例や手術拒否例なども含む196例の顎口腔がん症例のうち、根治的な治療をおこなった124例の5年生存率です。

顎口腔領域の悪性腫瘍に対する抗がん剤(化学療法薬)の投与方法には、静脈投与と動脈投与があります。抗がん剤を動脈から投与する治療法は、動注化学療法と呼ばれています。
口腔外科では合併症の少ない浅側頭動脈からの動注化学療法もおこなっています。
【治療効果】
予定された治療スケジュールがすべて終了し、著しい治療効果がみられた場合は、手術が不要となるケースがあります。すべての顎口腔がんが適応ではありませんので、治療開始前に各種治療方法の適応について慎重に検討します。
【投与方法の違い】
口腔外科での腫瘍切除後などの大きな組織欠損には、身体の他の部位から組織を採取し欠損部へ移植する再建手術をおこないます。その多くは、組織に動静脈をつけて一旦体から切り離すため"遊離組織移植"と呼ばれています。顕微鏡を用いて、移植組織の血管(動静脈)と頸部の血管を吻合(継ぐこと)します。顕微鏡下でおこなうこのような操作をマイクロサージャリーといいます。
再建手術の主体となる遊離組織移植術の症例数・生着成績を示します。2004年以降は形成外科とも協力し、より優れた機能的・審美的な再建に努めています。
下記に示すグラフは1997年から2010年に当科でおこなった顎口腔再建に用いられた使用皮弁の年代別変遷です。

【多様な移植組織】
顎口腔領域のがん切除後などに大きな組織欠損ができた場合、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)、構音機能あるいは容貌に大きな障害をきたします。その障害をできるだけ少なくするために再建(移植手術)をおこないます。
顎口腔領域では顎骨や舌、頬粘膜などさまざまな欠損に対し、骨や軟組織、時には人工物など多様な材料を用いて再建治療をおこないます。
左は下顎骨腫瘍のX線画像です。骨吸収をともなう腫瘍(画像上の矢印部分)がみられます。切除手術が必要です。
病変を含むよう下顎骨を切除し、採取した腸骨を残存下顎骨にチタンプレートで固定している状態です。固定後に頚部の血管と腸骨の血管を吻合しています。
1年半経過し、腸骨と下顎骨は骨性癒合しているためプレートを除去しています。
【治療例】
腹直筋皮弁とチタンプレートを用いた下顎再建
肩甲骨による下顎再建