脳腫瘍は、頭蓋骨の中に発生する塊で、良性と悪性のものがあります。通常、良性腫瘍は成長が遅く、治療後も再発しにくい一方、悪性腫瘍は急速に成長し、周囲の組織に浸潤することがあります。脳腫瘍は、初期にはほとんど症状がない場合もありますが、腫瘍が大きくなると、頭痛、吐き気、視力障害、手足の麻痺、言語障害などの症状が現れます。近年、脳腫瘍の診断技術は大きく進歩しました。特に、遺伝子解析技術の進展により、腫瘍の種類や予後をより正確に予測することが可能となりました。当院ではPET(陽電子断層撮影)などの画像診断技術により、腫瘍の正確な位置や広がりを詳細に確認できるため治療法の選択に大いに役立っています。また悪性度の高い腫瘍ではIMRT(強度変調放射線治療)などの新しい技術が導入され、より正常な組織を温存する精度が高い治療が行われています。もちろん開頭手術の安全性や根治性はかつてより進歩していますので全体として脳腫瘍の治療成績は向上しています。十勝の医療圏においても首都圏の病院と遜色ない、或いはそれ以上の高い水準で治療を提供できると考えています。

原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍
原発性脳腫瘍は、脳の細胞や脳を包む膜、脳神経などから発生した腫瘍です。組織診検査や遺伝子検査によって150種類以上に分類され、脳腫瘍の性質や患者様一人ひとりの状態に合わせて治療が行われます。対して転移性脳腫瘍は、他の臓器で生じたがんが、血液の流れによって脳に運ばれ、そこで増えることによって発生したものです。がんの種類としては、肺がんが約半数と多く、次いで、乳がん、大腸がんなどが多いとされています。
PET(核医学)による診断技術
当院は、北海道内では大学病院以外の脳神経外科で唯一、サイクロトロンを保有し核医学専門医が常駐する核医学診断技術に優れた病院です。脳腫瘍の鑑別、再発、放射線壊死等の診断にPET(核医学)を用いた診断はとても重要な意義を持ちます。

遺伝子解析
当院では、診断・治療に必要な遺伝子解析をタイムリーに行い、その結果に基づいて治療方針を決定してまいります。他の病院で手術を受けた方でも、病理レポートと病理スライドをお持ちいただければ、当院にて病理診断を受けることができ、がん遺伝子パネル検査を含め遺伝子解析が可能です。

神経病理医による病理診断と遺伝子パネル診断
脳腫瘍の診断は手術で摘出した組織を病理医が観察して診断します。近年、医療技術の発達により脳腫瘍では特定の遺伝子発現が化学療法の有効性や再発頻度を大きく左右することが知られています。脳腫瘍病理を専門とする医師が遺伝子診断に直接関与することができる医療法人は道内では北斗病院のみです。

放射線治療と手術による外科治療
当院では常勤の放射線治療医が2名おり、その経験と実績は国内でも有数です。また、手術では、ナビゲーション、 MEPモニタリング、機能的MRI画像 (functional MRI)による運動野・言語野の同定、DTI-FTによる錐体路・視路の同定、MEGによる優位半球決定、SEPによる一次感覚野・中心溝同定,覚醒下手術等を駆使して、より安全で根治性の高い手術を行います。

脳腫瘍に関するご相談
北斗クリニックの脳神経外科外来にて診察をおこなっております。詳しいお問い合わせは、コールセンターまでご連絡ください。セカンドオピニオンも随時お引き受けしております。ご希望の場合は、ご気軽にセカンドオピニオン外来をご予約ください。北斗コールセンター/0155-48-8000
脳血管障害を予防・適切に管理することは健康寿命を長く保つことに貢献します
2020年のCOVID-19によるパンデミック発生時、診療制限により脳腫瘍等の難病で大学病院等の限られた施設での治療に頼っていた脳神経外科患者さんや御家族が遠方へ通院することによる精神的、体力的な負担は相当なものだったであろうと考えられます。当院では、高度な診断機器による迅速な診断、大学病院の脳腫瘍診療チームと連携した個別の治療計画の提示、最新のナビゲーション、手術用顕微鏡、神経内視鏡、神経刺激装置等による高度な手術治療、脳腫瘍専門の病理診断医による病理診断、遺伝子パネル検査等が可能です。脳腫瘍を持つ患者様が札幌、東京等の首都圏の病院にかからなくても地元の病院で安心して高度な医療が受けられるような病院体制を整備しています。
脳神経外科 主任部長 脳卒中センター センター長
数又 研