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正常な心臓は、心臓内で発生する電気信号によって規則正しい収縮と拡張(拍動)を繰り返しています。心房細動とは、心房と呼ばれる心臓内の部屋が小刻みに震えて痙攣し、うまくはたらかなくなってしまう心臓の病気(不整脈の一種)のことをいいます。心房細動にかかると、動悸、めまい、脱力感、胸の不快感、息苦しさといった症状が出ることがありますが、その一方で自覚症状のない方もいらっしゃいます。

 

 

 

心房細動の主な原因

心房細動の原因には、高血圧、加齢、睡眠時無呼吸症候群、心不全、肥満、飲酒などが関与します。これらの要因により心房に負担がかかり、炎症や拡大が起こりやすくなります。また、肺静脈周囲では異常な電気刺激が発生しやすく、心房の電気活動が乱れる一因になります。どれか一つの要因という事ではなく、複数の要素が重なって発症すると考えられています。

 

 

心房細動の検査方法

心房細動の評価は、心電図やホルター心電図を用いて脈の乱れを確認します。心エコーでは心臓の形や機能を調べます。近年はスマートウォッチなどのウェアラブル機器でも不規則な脈拍を検知でき、早期発見に役立つ場合があります。これらを組み合わせて総合的に診断します。

 

 

 

心房細動が起こす合併症

心房細動を放置すると、心臓の機能が低下して心不全や、痙攣が原因で血液がよどみ、心臓内に血栓が発生、「心原性脳塞栓症(脳梗塞)」を引き起こすなど、命にかかわる危険性があります。

 

 

心原性脳梗塞症

心臓からの血栓が脳に詰まるタイプの脳梗塞です。心臓でできた血栓は、小さくても脳の主要な血管(2~4mm程度)を詰まらせてしまうには十分な大きさであり、重大な脳梗塞を起こしやすいと考えられています。多くは心房細動という不整脈が原因となっていますが、その他の心疾患が原因で発症することもあります。

 

 

心房細動に対する治療法〜薬物療法

初期治療では、脈を整える薬や血栓を予防する抗凝固薬を使用します。症状や合併症の危険性を抑えながら、発作の頻度や重症化を防ぐことを目的とします。心房内で血栓ができ、脳梗塞などを引き起こすのを防ぐための薬や、心拍数(脈拍)を正常に近づけ、動悸や息切れなどの症状を軽減する。心房細動を停止させ、正常な心臓のリズム(洞調律)に戻し維持する薬などが挙げられます。

 

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心房細動に対する新しい治療法 PFA

当院では、不整脈の一つである心房細動の治療として、これまで多くの患者さまにカテーテルアブレーションを行ってきました。従来の方法は、高周波を用いて心臓の異常な電気の通り道を遮断するものでした。十分な治療効果が期待できる一方で、熱や炎症による組織への影響に注意が必要でした。このたび当院では、最新の技術であるパルス フィールド アブレーション(以下PFA)を導入いたしました。PFAは、これまでのアブレーションとは全く異なる「電気パルス」を用いた治療法で、世界的にも注目されている新しい治療法です。

 

 

従来のアブレーションとの違い

 

 

PFA治療の流れ

足の付け根の血管からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、心臓内部まで誘導。その後心臓内の電気信号をマッピングする技術を使い、不整脈の原因となっている心房組織を特定します。カテーテルの先端から高電圧の電気パルスを数秒間照射することによって心筋細胞が死滅。異常な電気信号を生み出す細胞がなくなることで、心房細動を改善させます。

 

 

 

PFA治療のメリット〜高い信頼性

心臓の筋肉以外にはほとんどダメージを与えないため、従来の合併症(食道損傷、横隔神経麻痺、肺静脈狭窄など)のリスクが大幅に減少すると期待されています。

 

 

 

PFA治療のメリット〜治療時間の短縮と効果の安定性、回復が早さ

心PFAは照射時間が極めて短く、1回の通電がわずか数秒で終了します。そのため全体の手技時間も短縮され、患者さまの体への負担が軽くなります。また、初期の臨床研究では、従来のアブレーションと同等かそれ以上の心房細動再発抑制効果が報告されています。治療後の生活の質(QOL)の改善も期待できます。体への侵襲も少なく、合併症リスクも低いことから、従来よりも早期の退院や社会復帰が可能になるケースが増えています。

 

 

 

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