血流に乗って「がん」が骨に転移増殖
骨転移はがんが血流に乗って骨に転移増殖する状態であり、主な症状としては疼痛、脊髄に近い椎体に転移した場合、脊髄を圧迫して、しびれ、麻痺、膀胱直腸障害(排尿障害、排便障害)などを引き起こす可能性があります。また骨はカルシウムを多く含んでおり、骨が溶けることで血中にカルシウムが放出されて、便秘、吐き気、食欲不振、不整脈などの症状が出現することがあります。原発巣別では肺癌、乳癌、前立腺癌などで骨転移を生じることが多いです。

場所によって早期の照射開始が必要
骨転移病変を放置すると疼痛に加えて骨折に伴う生活の質低下、脊髄症状進行に伴う麻痺や膀胱直腸障害の完成などが挙げられます。特に脊髄に近い椎体に転移して脊髄圧迫症状を初めて生じた場合、24時間以内に治療を開始しないと先述の脊髄麻痺や膀胱直腸障害等の症状が不可逆となる可能性が高いため早急な照射開始が必要となります。上記骨転移に対する治療法の一つとして放射線治療が挙げられます。骨転移に対する放射線治療は1~5回程度であり、1回あたりの照射に必要な時間は20~40分程度です。
骨転移に対する照射で疼痛が改善
具体的な症例を提示します。症例は90歳前立腺癌の男性。2022年9月に他院泌尿器科で前立腺癌と診断されてホルモン療法のみで加療されてきました。2025年3月に骨シンチにて第2腰椎及び第4腰椎に異常集積を認め、骨転移が疑われましたが、その時は特に症状なく経過観察となりました。4月中旬に腰痛を自覚したため、経緯から骨転移による疼痛増悪と考えられ、緩和照射目的のため当科紹介受診となりました。放射線治療の概要及び予想される主な副作用について説明の上、同意されましたので照射準備の上、2025年5月2日に第2~4腰椎にかけて1回の照射を施行しました。照射終了後、徐々に疼痛が改善、その後は紹介元病院泌尿器科にて経過観察となりました。
※8Gy/1frの照射をL2-L4にかけて照射しました。
※8Gy/1frの照射をL2-L4にかけて照射しました。


この症例のように疼痛緩和や脊髄症状緩和等の緩和治療にて放射線治療は有益な治療法の一つです。骨転移に悩む患者様や御家族様には是非放射線治療も選択肢の一つということを覚えておいて頂ければ幸いです。また北斗病院での緩和放射線治療に興味がある方はセカンドオピニオン外来も行っておりますので是非お越し頂ければ幸いです。
トモセラピーとは
トモセラピーは手術のように身体に傷をつけることなくがん細胞を集中的に狙い撃ちすることができる、人にやさしくがんに厳しい放射線治療装置です。 放射線治療装置とCTが一体になっており、治療の度にCTでがんの位置を確認します。多方向から異なる線量をがんの形に沿って照射(強度変調放射線治療=IMRT:Intensity Modulation Radiation Therapy)するため、 がんの制御率を向上させ、かつ、副作用を極力軽減することができます。
北斗病院のトモセラピーに関する詳細はこちらをご覧ください。


松本 健一
放射線治療科 医長
出身大学
札幌医科大学 2012年
取得認定医/専門医
日本医学放射線学会放射線治療専門医
がん治療認定医
所属学会
日本医学放射線学会/日本放射線腫瘍学会