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北斗病院整形外科の手外科専門医は、特に手の疾患の治療に関する医学的スペシャリストです。整形外科の中でも手外科で扱うのは、肘から指先までの領域です。範囲としては狭いですが、手は日常的に使う非常に大事な部位で繊細なところです。手の疾患は慢性疾患と外傷に大別され、北斗病院に来院する手外科の患者さまの割合は慢性疾患が約7割、外傷は約3割となっています。

 

 

 

手根管症候群と肘部管症候群

手の訴えの中で多い、手がしびれるといった場合は、まず手根管症候群か肘部管症候群を疑います。親指側がしびれる場合(厳密には親指から薬指の半分までの範囲)は手根管症候群の可能性を考え、原因となる正中神経の圧迫の程度を神経伝導速度検査で確認します。一方、小指側のしびれの場合は肘の内側で尺骨神経が圧迫される肘部管症候群の可能性を考えます。頸椎で神経が圧迫された場合でも手のしびれは起こりますので、鑑別が重要になります。また、手根管症候群の主な特徴として、40歳以上の中年女性に多く、夜中に痛みで目が覚める「夜間痛」があげられます。

 

 

 

手根管症候群の治療法

手根管症候群の治療は大きく3つの方法があり、安静(装具装着)、薬物投与、手術(重篤な場合)があります。軽症であれば安静を目的に手首にサポータをつけてもらいます。重症の場合には手術を行います。手根管症候群の手術は日帰り手術です。手首を1cm切り内視鏡を挿入して横手根靭帯を切り、正中神経の圧迫を取り除きます。

 

 

肘部管症候群の治療法

肘部管症候群の治療はほとんどの場合が手術になります。肘部管症候群の手術も日帰り手術です。肘の内側を約8cm切り圧迫されている尺骨神経を開放し神経を肘前方にある筋肉上に移動させ再圧迫を防ぎます。手術後は1週間ギプスで固定します。

 

 

母指CM関節症

母指のつけ根の関節に起こる疾患が母指CM関節症です。軟骨がすり減って炎症を起こしていますから、最初の治療は痛い関節を安静にして痛みを減らす保存治療です。装具で親指から手首にかけて固定して親指の動きを制限することで炎症を減らすことができます。そのほかに飲み薬や関節注射などで治療を行っても改善がなければ手術を検討します。

 

母指CM関節症の治療法
母指CM関節症の治療法は、①固定装具装着による安静②薬物投与③関節注射④手術があり、母指CM関節症の手術は2通りあります。ひとつは関節固定術です。傷んだCM関節を骨で癒合させてしまい、関節を無くす手術です。もうひとつは関節形成術と言い、CM関節を形成する一方の骨、大菱形骨を取り除き、関節を無くしてしまう手術です。関節が不安定になりますので靱帯を新しく作る操作も必要になります。

 

 

 

患者さま一人ひとりに合った治療方法を選択

手外科の場合、たとえ簡単な手術でも抜糸まで1週間程度はかかります。その間、手術の傷を水に濡らすことができませんから、日常生活や仕事に大きく支障をきたします。したくても手術はできないという方もいます。まずは保存治療で症状の改善を図ることが大事だと思います。患者さま一人ひとりにそれぞれに合った治療方法を選択するという基本的なところを誠実に続けることで、信頼を得られる医療が実現できると考えています。