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胸腰椎圧迫骨折(骨粗鬆症性椎体骨折)とは、骨がもろくなる疾患である骨粗鬆症が基盤となり、背骨が骨折した状態の事をいいます。背骨が骨折すると、いわゆる潰れたように変形します。そのため痛みで動けなくなったり、歩行が困難になることもあります。さらにきちんと治療を行わなければ、背骨の中を通る神経の障害によって痺れや麻痺をきたしたり、あるいはいわゆる腰曲がり(後弯)が進行することもあり、日常生活に大きく支障をきたす原因となります。

 

 

女性に多い疾患

骨粗鬆症が原因であるため、中高年の女性に多い疾患です。尻もちなどの転倒で発症することもありますが、中腰になった、くしゃみをしたなどの弱い力でも発症することがあり、また何もしていないのに発生する患者さまもいらっしゃいます。急激に発生した腰背部痛の場合には、常に圧迫骨折を考慮しなければなりません。日本国内では1年間で約50万人に発生していると言われており、高齢化社会においてますます増加することが予測され、誰にでも起こり得る決して珍しい疾患ではありません。

 

 

 

診断方法

圧迫骨折を疑ったら、まずはレントゲン撮影を行います。当院では一般的な背骨の撮影ではなく、座った状態での撮影と仰向けの状態での撮影を行い、これらの画像を比較することによって骨折の有無、骨折の重症度を判定しています。またMRI検査も行い、レントゲンで見えない骨折の診断や、骨折の治りやすさを判定し、治療に役立てています。

 

 

 

手術治療について

当院で行なっている手術治療(経皮的椎体形成術)は、2種類を使い分けています。いずれも全身麻酔が必要ではありますが、所要時間は15〜30分程度、5mm程度の小さな傷が2つだけですので、体への負担も非常に少なく、高齢者でもとても安全に行える手術です。手術直後から痛みが軽減し、場合によっては手術当日から歩行可能な方もいらっしゃいます。入院期間も術後数日〜1週間程度で済みます。またこの術式は、豊富な手術経験が必要である日本脊椎脊髄病学会指導医で、かつ経皮的椎体形成術のトレーニングを受けた医師のみが実施可能です。

 

 

 

経皮的バルーン椎体後弯矯正術

経皮的バルーン椎体後弯矯正術(BKP(Balloon Kypho–Plasty))は骨の中で風船を膨らませて空間を作成し、その中に骨セメントを流し込んで固めます。比較的、潰れの軽い骨折が対象になります。①骨の中に小さなバルーンのついた手術器具を入れます。②バルーンを膨らませ、つぶれた骨を骨折前の形に戻します。③バルーンを抜いた空間に、骨セメントを充填します。④1時間程度で、骨セメントは固まります。

 

 

 

椎体内ステント留置術

ステントと呼ばれる金属製のカゴを骨の中に入れて、その中に骨セメントを流し込んで固めます。ステントにより骨を元の形に近づけることが可能となるため、ある程度潰れた形の骨折を対象とします。①骨の中に小さなバルーンのついた手術器具を入れます。②バルーンを膨らませ、つぶれた骨を骨折前の形に戻します。③バルーンで空いた空間にステントを挿入します。④ステントを膨らませて、セメント充填前の形を維持します。⑤空いた空間に骨セメントを充填します。

 

 

痛みやしびれのない日常生活を取り戻すお手伝い

首から腰まで、背骨のトラブルに対応いたします。痛みやしびれのない日常生活を取り戻すお手伝いが、脊椎外科医の仕事だと思っております。無理のない飲み薬やリハビリなどの保存治療から始め、必要な方には適切な手術治療の御提案もさせていただきます。手術は低侵襲(体に負担の少ない手術)を心がけております。また骨折予防のための骨粗鬆症治療も積極的におこなっております。