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関節リウマチ(以下RA)とは、免疫の異常により主に関節に炎症を引き起こし、関節痛を生じさせるだけでなく、進行すると関節や骨が破壊されていく病気です。RAでは関節内の滑膜という組織にある細胞から産生される炎症性サイトカインという物質の作用により、炎症細胞が関節滑膜で浸潤増生し軟骨破壊が生じます。さらに滑膜内の破骨細胞が形成促進されると骨破壊が引き起こされ、関節が変形し日常生活に支障を引き起こすほどになってきます。

 

 

関節リウマチのステージ分類

関節リウマチのステージ分類は初期から末期まで4つのステージで分類されています。ステージⅠ(初期)の初期は骨・軟骨の破壊はみられないが、滑膜が増殖している状態です。次のステージⅡ(中等期)では軟骨破壊により骨の間隔が狭くなります。ステージⅢ(高度進行期)は骨・軟骨の破壊が進行します。最後のステージⅣ(末期)は関節が強直・固定された状態になります。。

 

 

関節リウマチの好発部位

関節リウマチの症状は、一般的に知られている手足の関節の変形・痛みの他に、視力の低下や息切れ、リンパ腺の腫れ、足のむくみ等、関節外の全身にさまざまな症状を起こすことがあります。

 

 

関節リウマチの主な症状

関節リウマチの主な症状は、手足の指など複数の関節に現れる「関節の痛み」「腫れ」「朝のこわばり」で、特に朝は症状が強く、動かすと楽になります。症状は左右対称に現れることが多く、全身倦怠感や微熱などの全身症状を伴うこともあります。

 

 

早期の発見と治療が大切

RAにおいて関節痛を緩和することは重要ですが、一般的な消炎鎮痛薬ではRAの炎症そのものを抑えられません。炎症をコントロールできなければ、将来的に骨や関節の破壊が進行する恐れがあります。RAは発症してから2年以内に骨破壊が急速に進行するため、いかに早期に診断し治療を開始するかがポイントです。現在は、米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会の分類基準に基づいて診断を行い、特に発症12週以内に適切な抗リウマチ薬により治療を行うことで、薬剤への治療反応性を高め、骨関節破壊を抑制しうると考えられています。

 

 

薬物療法

RAの治療には免疫異常による関節炎をターゲットとして関節破壊を抑える作用を持つ抗リウマチ薬による治療が必須になります。まず第一に使用を考慮されるべき薬剤がメトトレキサート(MTX)で、アンカードラッグと呼ばれます。また生物学的製剤の高い有効性は広く知られ、さらに近年、JAK阻害薬という新しい画期的な経口治療薬も出現しています。原則的にまずMTXから開始し、1~3か月ごとに疾患活動性を評価し、効果不十分な場合、生物学的製剤またはJAK阻害薬の導入を検討します。この二つは高コストの問題がありますが、生物学的製剤はバイオシミラー製剤も選択可能です。これらの薬剤は強い免疫抑制作用があるため、感染リスクの高い方や潜在的感染症をお持ちの方には注意が必要です。

 

 

手術療法

滑膜切除術
炎症が激しい関節滑膜を切除します。最近では薬物療法の進歩により頻度は減っています。
人工関節置換術
膝や股、肘、肩関節などに行われ、素材や手技の改良とともに、耐用年数も大きく伸びており、医療技術の進歩により、高齢の患者さまでも積極的にこの手術が行われるようになりました。
関節固定術
関節破壊が著しい場合や、人工関節が難しい場合などに行います。関節を固定することで可動性を犠牲にしますが、確実な除痛と支持性が得られます。主に行われるのは頸椎・足関節・手指や足の母趾などです。
関節形成術
初期~中期において、関節構造を可能な限り残しつつ、関節の機能改善をはかるもので近年増加傾向です。主に肘・手首・指・足趾の関節で行われます。

 

 

 

リハビリ

RAのリハビリでは疼痛のコントロールが重要であり、装具や生活指導による関節の変形予防も必要です。症状は朝に強いことが多く、状態の良い時間帯にリハビリを行うなどの配慮が必要です。炎症活動期は、関節破壊が進行する時期であり、安静が重要で、鎮痛目的の物理療法(温熱、寒冷療法、経皮電気刺激療法など)が行われます。炎症非活動期には、愛護的なROM訓練、筋力強化、歩行エクササイズやリウマチ体操などの運動を勧めます。確立した変形やそれによる痛み・ADL低下に対し、自助具、装具、靴などの使用も有効です。

 

 

早期の診断と治療で身体の機能障害を最小限に

関節リウマチは、整形外科の日常診療で必ず遭遇する疾患です。私は1988年卒ですが、私が医師になったころのリウマチ外科は、疾患コントロールが不十分であるゆえに持続する滑膜炎と、次々破壊される関節に対する外科的治療の連続でした。しかし現在、リウマチ治療は大きく進歩し、早期診断と早期薬物治療により、関節破壊や身体機能障害を最小限に抑制することができるようになりました。一方、残存する機能障害に対する手術を高いモチベーションのもと希望する患者さまも増加しております。私は日本リウマチ学会専門医でもあり、鑑別を含めた早期診断、薬物治療、外科的治療、リハビリなど関節リウマチのトータルマネージメントに携われることを幸甚に思っております。リウマチに限らず関節の痛みにお悩みであればお気軽にご相談ください。