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大腿骨近位部骨折とは、股関節に近い大腿骨の骨折のことを言い、大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折がほとんどを占め、国内で年間約17万件発生、そのうち約8割の13万件は女性で高齢者、とりわけ骨粗鬆症を発症している方に多い傾向にあります。

 

 

転倒以外でも起こりうる可能性が

大腿骨近位部骨折は転倒などの外力で起こることが多いですが、頚部の場合、高齢者によっては転倒していなくても骨折が生じることがありますので注意が必要です。また認知症が進行している場合など、痛みを伝えること自体できない可能性も考えられます。特に立っているときに股関節痛が持続する場合は、整形外科を受診することをお勧めします。

 

 

骨接合術人工骨頭挿入術人工股関節置換術

大腿骨頚部骨折は骨折の状態や患者さまの状態により、適切な手術方法が変わります。骨折の転位(骨折部のズレ)が少ないと骨接合術が可能です。高齢者で骨折の転位が大きい状態だと人工骨頭挿入術か人工股関節置換術が推奨されています。骨接合術は人工骨頭挿入術や人工股関節置換術に比べて、手術時間が短く出血量も少なく、細菌感染のリスクも小さいです。早期に受診していれば骨接合術が可能であった症例でも、時間が経過し転位が大きくなり人工骨頭挿入術となる例もあります。

 

 

 

輸血について

大腿骨転子部骨折は受傷時から体内で出血する量が多いので、受傷日から輸血を要することもあります。手術は骨接合術が主な適応となりますが、頚部骨折を合併している場合は、人工骨頭挿入術が適応となる可能性があります。

 

 

術後のリハビリテーション

R術後は数日で車椅子に乗ることが可能ですが、歩行練習の開始時期は固定の状態により変わります。通常は翌日からベッド上で座る練習を始め、早い段階での起立・歩行を目指してストレッチ、筋力強化運動などを行います。これらには、寝たきりに伴う認知機能の低下や関節の拘縮、筋力の低下など多くの合併症を防ぐ目的もあります。また、必要に応じて痛みの緩和のためのアイシング(寒冷療法)や、患部と筋肉のこわばりの軽減のためにホットパック(温熱療法)も行います。
歩行の練習
歩行練習は、平行棒、歩行器(あるいは松葉杖)、杖と段階的に進めていくことが多いです。必要があれば、階段昇降の練習や屋外での歩行練習も行います。その他、日常生活動作の練習として整容、着替え、トイレ、入浴などの動作練習を行います。

 

 

早期発見で侵襲の少ない骨接合術を

大腿骨が骨折すると立ったり歩いたりすることが全く出来なくなる、と一般に思われていると思います。しかし大腿骨頚部骨折の場合は、骨折が生じた直後でも歩行が可能な場合があります。歩いて来院される患者さまもいらっしゃいます。早期発見することで、より体に侵襲の少ない骨接合術を行うことが可能となります。早期に治療することにより筋力低下を防ぎ、リハビリテーションにより歩行獲得の可能性が高まります。 歩行が不能になってしまうと、日常生活が大きく制限されることになります。多くの患者さまが歩行獲得できるよう治療に従事しています。