北斗トップ > 北斗について > 特集 脊椎内視鏡手術

特集 脊椎内視鏡手術



椎間板ヘルニアという病気について

皆様の多くは一度は耳にしたことがある大変ポピュラーな病気だと思いますが、改めて概要をお伝えします。椎間板とは背骨を構成する骨(椎体)の間にある軟骨(椎間板)です。本来ならクッションの役割をするとても重要な組織ですが、加齢により椎間板が痛んできたり椎間板に圧がかかると、中の軟らかい軟骨が神経の方に飛び出してしまうことがあります。これが椎間板ヘルニアという病気のなりたちです。

「内側」と「外側」。椎間板ヘルニアの出現場所による違いについて

通常は脊柱管という神経の通り道の中でヘルニアが起こることが多く(80%程度)これを内側型ヘルニアと呼びます。このヘルニアは神経根の根本で圧迫されて痛みがでますが、脊柱管の内ではなく外側の椎間孔部と呼ばれる箇所でヘルニアが飛び出すことがあり(20%程度)外側型ヘルニアと言われています。このヘルニアは神経の1番敏感なガングリオンと呼ばれている場所を圧迫することが多く、かなりの激痛が生じることがあります。

椎間板ヘルニアの主な症状

まず腰痛から始まり、その後下肢に痛みやしびれなどの症状が出ることが多いです。下肢痛やしびれ感の出る場所はヘルニアが飛び出した椎間によって異なります。1番ヘルニアになりやすい箇所はL4/5、L5/S1椎間高位で主に坐骨神経領域に沿って痛みやしびれが出ます。ヘルニアの大きさによっては足が動かなくなる麻痺症状がでることもあり、さらに進行すると膀胱直腸障害といって排尿排便の感覚が麻痺してしまうこともあります。

椎間板ヘルニアの検査方法

問診と身体所見で身体の状態を確認し画像検査で診断をします。問診で重い物を持ってからとか身体を捻ってからとか、咳やくしゃみをしてから症状が出たなどのきっかけを聞くことは診断をする上で重要です。画像診断は特にMRIが重要で椎間板の出っ張りを確認したり神経の圧迫を確認したりします。最近はMRミエログラフィーで神経根のみを描出して外側病変があるかどうかの診断にも役立てています。

椎間板ヘルニアの治療〜保存治療

教科書的には薬物治療やリハビリ治療などと言われていますが、個人的に1番大事なのは安静だと思います。どんなに良い薬を飲んでも効果は限界がありますし、ブロック治療などを選択しても除痛効果の時期に限界があります。例え安静で体幹の筋力が落ちても関節や筋肉が固くなってもヘルニアに よる下肢痛が改善してからいくらでも取り返すことは可能ですので、ヘルニアになって腰痛下肢痛が強いときはできるだけ安静に過ごすことをお勧めします。

椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症

椎間板ヘルニアは何らかの外傷を契機に腰痛から始まり、多くは下肢症状から出現し、僅かながら若年層に多く見られます。症状も片側のことが多く、時に激痛や麻痺症状が出現します。腰部脊柱管狭窄症は慢性的な経過から徐々に悪化し、両下肢のしびれや間欠性跛行が見られることが多く、高齢者に多い特徴があります。
【間欠性跛行】歩行中に脚の痛みやしびれが起き、しばらく休むと回復する症状を繰り返すこと。

脊柱内視鏡手術について

小さな傷から内視鏡を挿入して行う低侵襲手術で、筋肉の損傷が少なく、術後の痛みや回復期間が短いのが特徴です。従来の手術に比べ、周囲の組織への負担が少ないため、早期の社会復帰が可能です。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など神経が圧迫されて痛みがある患者さまの症状を取り除くことが主な目的です。1997年にアメリカで開発され、1998年に本邦に導入されました。

椎間板ヘルニアの外科治療〜脊椎内視鏡手術 01 MED

内視鏡下椎間板摘出術といい16mmのチューブラーレトラクターを用いて行われる手術です。当院では最もスタンダードな手術であり術後成績も良好です。カメラを専用器材で固定して行う手術のため両手を自由に使うことができます。左手は吸引チューブを用いて右手は骨を削ったり組織を摘出したりするのに使えます。4Kのモニター画質は神経を鮮明に描出することができ、立体感もはっきりわかります。

MEDの特徴

・対応疾患 すべりを伴った重度の狭窄症や巨大ヘルニア、正中型のヘルニアなど
・傷の大きさ 16mm
・手術時間 30分〜50分(部位によって変化)
・離床まで 通常は翌日から歩行訓練可能
・入院期間 4日〜6日
従来法では前屈みになりのぞき込む様な姿勢で手術をしていたのですが、内視鏡手術は真正面のモニターの画面を見ながら、腰をのばして手術することができるため、術者の身体への負担も格段に違ってきます。また使用される専用の道具は先端が弯曲しており、狭い範囲でも十分な自由度を有することができます。

MEDの手術風景(左・上)。正面に設置したモニターを確認しながら、専用の器具(右・下)を使用しヘルニアを除去していきます。

椎間板ヘルニアの外科治療〜脊椎内視鏡手術 02 PED

全内視鏡下腰椎椎間板ヘルニア摘出術といい、従来行われている腰椎椎間板摘出術(皮膚切開4-5cm)や従来からあった内視鏡下椎間板摘出術(MED手術:皮膚切開16mm)をさらに低侵襲にした手術です。皮膚切開は8mmで、直径8mmの内視鏡を用いてヘルニアを摘出します。健康保険が適応される腰椎椎間板ヘルニア摘出手術において最小侵襲の手術です。手術は全身麻酔で行います。

PEDの特徴

・対応疾患 腰椎椎間板ヘルニアなど
・傷の大きさ 7~8mm
・手術時間 30分〜50分(部位によって変化)
・離床まで 通常は翌日から歩行訓練可能
・入院期間 3日〜4日
MEDと違い常に水を環流しながら行う手術で術後の癒着が起きにくかったり、組織の瘢はんこん痕化が生じにくいというメリットがあります。手術中も骨を削るドリルから熱が出るのですが、水で環流することで神経周囲の火傷症状を防ぐことができます。ただMEDと比べ細く長い器具を使用するためカメラや骨を削る器具の破損が起きやすくコストがかかる可能性があります。

負担の少ない低侵襲手術を



内視鏡手術は1cm前後の傷でほぼ1時間以内に終わる手術です。
今まで腕や足の痛みやしびれがあっても我慢してこられた患者さまは是非一度、外来受診してみてはいかがでしょうか?

脊椎センターセンター長
森 信太郎
地域の皆様が明るく健康な毎日を過ごせるよう支援させていただくことが、私たち北斗の役割と考えています。
「地域の皆様とともに、常に革新と改革を推進してゆく病院」をホスピタリティ・アイデンティティに掲げ、
地域での細やかな医療・保健・福祉のネットワークを広げ、ぬくもりに満ちた医療をこれからもすすめていきます。